討議資料
琉球新報 2010年7月16日

在沖米海兵隊 広がる不要論  下院の重鎮「冷戦の遺物」

 在沖米海兵隊の不要論が最近、米国内で急速にわき上がっている。米民主党の重鎮で、政府に影響力を持つバーニー・フランク下院歳出委員長が「米国が世界の警察だという見解は冷戦の遺物であり、時代遅れだ。沖縄に海兵隊がいる必要はない」と公に訴えたことがきっかけだ。同氏らの意見が反響を呼び、メディアも大々的に取り上げている。背景にあるのは深刻な財政赤字。リーマン・ショック以降、不況で生活に苦しむ国民の不満が、膨大な軍事費に向き始めている。米軍の戦略見直しと財政再建の必要性が合わさり、海外駐留米軍の撤退を求める声は拡大する様相を見せている。
 ことの発端は今月6日。与党フランク氏と野党ロン・ポール氏の両下院議員が、米国の有力サイト「ハフィントン・ポスト」に寄せた論文だ。「なぜわれわれは軍事費を削減しなければならないのか」と題し、2010年度の軍事費6930億ドル(約61兆円)は歳出全体の42%にも上り、経済活動や国民生活を圧迫していると説明。米国が超大国として他国に関与することが、逆に反米感情を生み出している側面も指摘した。
 結論として「財政再建と雇用創出が国の最優先事項だ。度を越した軍事費問題に取り組まなければならない」と強調した。
 この記事が大きな反響を呼んだ。8日に大手テレビMSNBCやCNNニュースはフランク氏らを招き、論点を取り上げた。10日は米公共ラジオ局も取り上げ、フランク氏は「1万5千人の在沖海兵隊が中国に上陸し、何百万もの中国軍と戦うなんて誰も思っていない。彼らは65年前に終わった戦争の遺物だ。沖縄に海兵隊は要らない。超党派で協力し、この議論を提示していきたい」と訴えた。
 12日のウォールストリート・ジャーナルは「普天間飛行場の県外・国外移設を望む沖縄に、強力な助っ人が現れた」とし、今後この動きが加速する可能性に触れた。
 国会議員を15期30年務め、政治手腕に評価の高いフランク氏の発言には、綿密な裏付けがある。自らが主導し超党派で立ち上げた軍事特別委員会が、6月に発表した報告書だ。軍事専門家らを交えて軍事費を細かく精査した結果、欧州やアジアの駐留軍の縮小、オスプレイなど軍用機調達の停止・延期などによって、10年で1兆ドル(約88兆円)が削減できるとの試算を出した。
 ワシントン・ポスト紙は、この報告書を踏まえた記事を掲載し、「米国は世界の警察として、アフガニスタンやイラクだけでも1兆ドルを費やしてきたが、世界の中の役割について再考が必要だ。われわれはそろそろ正直に、そして公に議論すべき時期にきているのではないか」と、海外駐留米軍の役割について国民的議論を呼び掛けた。
 (与那嶺路代ワシントン特派員)



解説 

 琉球新報のワシントン特派員・与那嶺路代記者の記事は私たち沖縄に住む者には当然の事と思っています。
なぜならば、普天間飛行場の危険性については、沖縄が本土復帰した年に米国務省は米国防省に対して「普天間は危険なので、将来政治問題化する
ので、早めに対策をとるべきである」と主張していることが九州大学の管教授が米公文書館で発見した文書で明らかになっています。
その後、普天間基地に赴任してきた司令官を取材したところ、3人の司令官は危険であり、移転すべきだ、と主張しています。
また、沖縄を訪問した米国防省のラムズフェルド長官も危険であり、撤去の必要性を述べております。
 しかし、日本政府は危険性について言及してこなかった。少女暴行事件でやっと口を開いただけです。危険であっても、沖縄県内に移設することだけを
考えているだけです。
 それは本土の政治家、官僚、一部の評論家、新聞は沖縄に基地を移設するだけを考えている。それはまさに大政翼賛会の再来でしかない。中央紙のワシントンからの
記事は「親日派」と称する日本を見下した知識人の言葉だけを引用し、また書かせている。
 アメリカ民主党の中にもリベラルな議員がいること、また沖縄から基地撤退を主張してきた米国の知識人もいることを知っている琉球新報社の判断が記者の特派に結びついている。
現在、各新聞社は経営的に苦しい。その元凶はテレビと変わらぬ記事にあり、新聞で改めて読む必要がないからである。東京新聞が好評なことだけでも分かることだ。
 とにかく、中央紙がつまらなくなっていることを見せつけたのが与那嶺記者の「在沖米海兵隊不要論」である。その琉球新報の記事を1ページをつぶして報道したのが高知新聞だ。
こうした地方紙の連携がすすめば、中央紙の全国配信は崩れていくだろう。東京の出来事、海外のことはテレビで間に合わせることができるからである。不要論については後追い記事さえ
書かないことは戦前戦中の言論統制、大政翼賛会につながっている。
 琉球新報の編集長で、社長・会長でもあった反骨のジャーナリスト池宮城秀意氏は「日本人は根っ子のところでは何も変わっていないではないか。何事につけ、うって一丸となり、遮二無二突き進む。いつまた大政翼賛会的な風潮がわき起こるか知れたものではない」と看過している(『沖縄独立の系譜』)。
 琉球独立の理論的な支えであった初代琉球政府立博物館長で作家の山里永吉氏は米軍占領時代を回顧して「日本に訴えても何一つ変わらなかったではないか。むしろ、アメリカに訴えたら効果が出たことは私たち自身がよく知っている」と、日米の政治家の誠実さを比較していた。
 沖縄の知識人たちは日本人の本質をよく見抜いていた。「抑止力」なる幻で沖縄に海兵隊基地を押し付ける日本政府は、独自の平和外交を展開できないツケを沖縄基地でごまかそうとしているだけである。尖閣諸島の地図切手を発行しようとした琉球政府に圧力をかけてきた外務省のやり方は尖閣諸島が領土であることを放棄しているに等しい。外務省出身の外交評論家の岡本行夫氏が沖縄名護市辺野古に普天間基地移設を主張するのは、かつての地図切手発行の失敗を隠すためのものと考えている。
 私の先輩の一人は「ヤマトは沖縄が中国と仲良くなり、経済的に発展するのがこわいのだ。4・25県民大会で基地撤去は県民の総意であることは、保革とも確認ができたので、今後は経済自立に向かって進むべきだ。いつまでも鼻先にニンジン(振興策)をぶら下げられて操られている屈辱感を無くすのが次の県知事の施策だ」と話している。
 琉球新報の与那嶺記者の記事は、沖縄の歴史を振り替えさせると共に、日本人の本質、中央マスコミの体質を導き出すことになった。アメリカ第3代大統領トーマス・ジェファーソン氏の言葉を新聞週間などによく引用する中央紙の皆さんはもう一度「新聞なき政府と、政府なき新聞のどちらを選ぶと問われたら、私は躊躇することなく後者だ」の意味するところを理解してもらいたい。
 比嘉康文(68歳、元沖縄タイムス記者)

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