独立目指す動き再び 大国に翻弄され辛酸
第4部 チャモロ人
グアム島 民族の炎 自己決定権の闘い


琉球新報 2017.11.26



 屋台にココナツミルクを使ったバーベキュー料理やスターフルーツなどの果物が並ぶ。入り口に横付けされた何台もの観光バスから家族連れや若いカップルが降り、店の前に行列をなす。

 北朝鮮のミサイル発射に揺れる9月中旬、グアムの「チャモロビレッジ」で開かれたナイトマーケットは観光客でにぎわっていた。貝やココナツの葉を使った工芸品を買い求める人々と店員の間で英語、日本語、韓国語が飛び交った。

 グアムは青い海や先住民族チャモロ人の伝統文化を観光資源に、1970年代から日本人観光客を多く受け入れてきた。一方でグアムのチャモロ人には、大国の影響下で辛酸をなめてきた歴史がある。

 17世紀からスペインの植民地統治下でチャモロ人の伝統文化は破壊され、米国統治や太平洋戦争時の日本軍統治下でも土地や財産を奪われ、命を奪われてきた。現在も米国の非編入領土(準州)であるグアム住民には大統領選挙の投票権がなく、米連邦議会に下院議員1人を送り出しているが、本会議の議決権を持っていない。

 2006年以降の在日米軍再編を巡っては、在沖米海兵隊の移転で経済効果に期待する人々と、基地負担の急増を不安視する人々で島が二分された。そして現在は北朝鮮のミサイル問題に振り回されている。

 その中で台頭してきたのが米国からの独立を目指すチャモロ人たちの動きだ。昨年4月、グアム政府の脱植民地化委員会が独立の是非などを間う住民投票を行うことを決定した。1980年代に取り組まれた「コモンウェルス(自治領)」への政治的地位変更を巡る住民投票以来の方針決定だった。しかし昨年、連邦地裁は投票権がほぼチャモロ人に限られていることに対し、違憲判決を出した。

 グアムで複数回、行われてきた政治的地位を巡る住民投票の目的は、先住民族チャモロ人の自己決定権回復だ。そのためグアム政府は上訴した。判決で認められなかった場合はグアム全住民を対象に投票を実施することも検討している。

 グアム大学の学生らを中心にした団体「インディペンデント・グアハン」で活動するマニー・クルーズさん(28)は「グアムの観光産業は独立しても問題ない。農漁業も振興し、自立していけると思う。それよりもチャモロ人のことを自分たちで決められない現状が問題だ。住民投票は必ず行うべきだ」と語る。(宮城隆尋)


写真は観光客でにぎわう「チャモロビレッジ」。 日本人を中心に、韓国人や米国人などがチャモ口料理などの文化に触れる=米国グアム準州ハガッニャ


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