夕刊フジ 2010年7月22日号

みんなの党大研究

消費税増税に「反対」の理由
埋蔵金発掘や資産売却を優先
実現には政治的決断が不可欠


 みんなの党は、「消費税増税に反対」と報道されるので、財政再建は考えていないかのように誤解されている。しかし、財政再建については、新たな財政規律のルールを導入するとして、「(1)国の純債務残高(2007年度末で283兆円)の対GDP比(55%)を、経済危機を克服した後、5年間で50%以下にすることを目標 (2)基礎的財政収支の黒字化を10年後に達成」と、国際的にも標準的な財政再建への道筋を考えている。
 ただ、民主党や自民党と異なっているのは、「増税の前にやることがある」として、デフレからの脱却による名目成長率の上昇、埋蔵金の発掘などの資産の売却、公務員人件費などの歳出カットを前提条件としている点である。
 これらが実現可能かどうかは、これまでの実績をどのように考えるかによる。例えば、最近10年間の平均物価上昇率(GDPデフレーター)は日本がマイナス1.2%であるが、日本を除くG7ではプラス2.2%だ。データをみると日本だけが特異値になっているが、問題は日銀が十分な金融緩和をしてきたのでこれ以上無理と思うか、物価安定目標がなく十分な金融緩和ができたのにやらなかったと思うかだ。前者ならデフレ脱却はできないし、後者なら可能となる。
 埋蔵金についても、会計的な意味で存在するのは確かであるが、これまで常に官僚は「ない」と言い続けてきた。この「ない」という意味は会計的には存在するが、官僚が「使えない」という場合に用いられる。要するに、官僚がこれ以上出せないということを、政治家はうのみにするのか、国民のために出させるのかで、埋蔵金の捻出(ねんしゅつ)の実現可能性が変わってくる。
 また、政府の資産は660兆円あり、その内訳について、天下り法人への貸付金・出資金で220兆円以上、年金資産で130兆円以上、外為運用有価証券100兆円、現金預金20兆円、固定資産180兆円などとなっている。これは公表されている財務諸表をみればわかる。このうち、天下り法人を全廃するつもりであるなら、220兆円は証券化などの手法で資産から切り離せる。しかし、これら法人を温存しようと思えばできない。外為運用資産は、先進国で変動相場制の国ならこれほど所有しない。先進国並みの為替管理にしようとすれば、ほとんど資産から落とせる。
 最後に、公務員人件費カットであるが、これも公務員は民間と違ってリストラできないと思えば、実現可能性はない。しかし、民間並みにリストラという制度を作れば実現できる。いずれにしても、政治的な決断によるのだ。
(嘉悦大教授)



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