琉球独立論研究資料

フライデー2015年4月24日号

「基地はいらない。本当にいらないんだ」沖縄の民意は、ガマンの限界へ

「沖縄独立論」浮上! ついに実現への理論と現実的スケジュールが語られ始めた


「知事、ガンバローっ!!」
「沖縄に基地はいらない!」

 4月5日、菅義偉官房長官(66)との"直接対決"を終えた翁長雄志・沖縄県知事(64)が、会場のホテルから出てくると、集まった数百人の沖縄県民が一斉に声を挙げた。
「基地問題で後退することはない!」

 声援に応えるように、翁長知事がこう言うと、声援は歓声に変わったムム。

 沖縄はいま、緊迫した空気に包まれている。
「今回の会談によって、安倍政権は寝た子を起こしてしまったのです」

 と言うのは、元琉球新報論説委員長の前泊博盛・沖縄国際大学教授だ。
「会談を行っても、菅官房長官は『(普天間飛行場の)辺野古への基地移設は、唯一の解決策』という方針を一切変えず、工事の中止に応じる考えがないことを強調しました。これで沖縄県民に『政府が完全に沖縄を見離した』という気持ちが芽生えてしまった」

 前泊教授は、最近沖縄のなかである"変化"が起こっていることを指摘する。
「思いもよらぬ人の口から『独立』という言葉が出てきて、驚かされることが増えました。これまでは"沖縄独立論"の賛同者は県民全体のゼロコンマ数%程度と考えていました。まだ数%程度かもしれないが、実感としてその数字が上がってきているのは間違いないですね」

 3月31日、那覇市内で憲法学者の木村草太・首都大学東京准教授の講演会が行われたが、聴衆からは「沖縄独立論について、先生はどう思うか」という質問が飛んだ。「独立論」が現実味をもって語られるようになってきているのだ。

 火をつけたのは、昨年沖縄でベストセラーとなった一冊の本だ。沖縄県石垣市出身の松島泰勝・龍谷大学経済学部教授が書いた『琉球独立論』。約300ページのこの本では、沖縄の独立が決して非現実的な選択肢ではないことが説明されている。松島教授自身が語る。
 
「基地問題を根本から解決するには、日本から独立するしかないのです。そして理論的に、琉球の独立は可能だと考えています。具体的な手順としては、まず、国連の『脱植民地化特別委員会』という組織が作成する『非自治地域リスト』に登録されることを目指す。ここに登録されれば、国連の支援を受けて、独立を問う住民投票を行う道筋ができるのです」

 最近ではユ11年に、仏領ポリネシアが議会で「非自治地域リストに登録する」という決議を採択した。これがひとつのモデルになる、というのだ。その第一歩として、松島教授らはユ11年にグアム政府の代表団とともに同委員会に参加、琉球の基地問題について報告したという。
「地道な作業にはなりますが、県内で独立の気運を高めて、ポリネシアと同じような決議を採択するよう、沖縄県議会に働きかけ、リストへの登録を目指す。そして、独立を問う住民投票を行う。昨年9月にスコットランドで住民投票が行われましたが、それと同じです。

 その住民投票で『独立をする』という票が過半数を上回った時点で、独立宣言をし、世界の国々に『琉球国』の存在を認めさせる。そして、国連に加盟するという道筋です」
 
 独立論を荒唐無稽と言うのは簡単だが、国際社会は沖縄の声に耳を傾けはじめている。沖縄には様々なNGOがあるが、それぞれが国連本部を訪問して沖縄の窮状を訴えており、実際に国連の人種差別撤廃委員会では、「沖縄への基地の押し付けは、人種差別」と認められた。

中国が「漁夫の利」を狙う

 厄介なのは、中国政府がこの独立論に注目していることだ。ここ数年、中国共産党の機関紙や政府系シンクタンクが「琉球独立」を鼓吹するような記事、論文をさかんに発表している。たとえばユ13年5月11日の「環球時報」(共産党の機関紙『人民日報』の国際版)の社説では、
〈中国は力を投入し、沖縄地区に「琉球国復活」の勢力を養っていくべきだ。20年か30年後に中国の実力が強大になったとき、中国は琉球を日本から離脱させるよう仕向けるべきだ〉
 と大胆な提案をしている。

「中国の国家発展戦略上、沖縄の独立は歓迎すべきこと。早々に独立するとは考えていないが、そうした動きが本格化したときに備えて、理論構築しているのです。AIIB(アジアインフラ投資銀行)設立のために水面下で各国に周到に働きかけたように、今後中国は『沖縄独立』を支援するよう、呼びかけるかもしれない。気づいたときには日本以外の多くの国々が沖縄独立に賛成していた、ということも考えうるのです」(中国事情に詳しいシグマ・キャピタルチーフエコノミストの田代秀敏氏)

 今後、独立論はますます加速しそうだ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「安倍政権が沖縄との対話を継続する姿勢を見せるしかない」と指摘する。
 
「石破茂・前幹事長は頻繁に沖縄に足を運び、自治体の首長や財界人と膝をつめて沖縄の問題について話をしていた。そうした姿勢が、沖縄の不満を抑えていたのです。たとえ結論を大きく変えることはできなくとも、話し合う機会を持つことがいかに重要か、再考すべきではないでしょうか」

 菅長官のように、自説を主張するだけでは事態は悪化する一方だ。ユ15年が沖縄独立運動元年になるムム。
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安倍首相は沖縄問題のほとんどを菅官房長官に丸投げしている。翁長知事とのトップ会談はいまのところ未定だ
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面会後もほとんど目を合わせることがなかった菅官房長官(左)と翁長知事。翁長氏は菅氏に「上から目線」「日本の政治の堕落」と強い言葉をぶつけた
PHOTO=鬼怒川 毅(安倍氏) 堀田 喬(菅・翁長会談) 時事通信社


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