琉球独立論研究資料
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現実味を帯びる「琉球独立」 歴史的第一歩を踏み出すか!?

 5年後の「2022年度以降」で、日米両政府が合意した沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の返還計画。それに向けた動きと並行するように、沖縄独立の機運が高まっていく──。

「多くの県民が、独立に近い体制を求めているのは明らか。外交権のない知事では、基地を撤去したくてもアメリカの大統領に会うこともできないですから」

 そう語るのは『琉球独立論』(バジリコ刊)などの著書がある龍谷大学経済学部の松島泰勝教授だ。これまでも研究者の間では「独立=復国」は繰り返し語られてきた。ただ一般的には“居酒屋談議”の域を出なかった。そこに変化の兆しが見られるのだという。

 今年の元旦、地元紙の琉球新報が報じた県民意識調査によれば、沖縄の自治のあり方について「独立」「連邦制」「単独州など」を選択して、外交・安全保障で沖縄の権限強化を求める声が約35%に上ったのだ。

 背景にあるのは、普天間基地返還の前提となる名護市辺野古の新基地建設をめぐる問題などで、沖縄に対する構造的な差別を県民が認識するようになったことだ。すでに、辺野古では本格的な工事が再開した。

「日米両政府のあまりにも強硬なやり方に、沖縄の自己決定権を求める声が強まっているのです」(松島氏)

 地域が独立するためにはどんなプロセスが必要なのか。考えうる手段の一つは、国連の脱植民地化特別委員会に「非自治地域」として登録すること。松島氏が解説する。

「登録されたニューカレドニアでは近く、仏領にとどまるか独立かを決める住民投票が行われると聞いています。沖縄県議会で決議して国連に働きかけ、国際社会の支援を受けながら平和的に独立を目指すのです」

 独立に当たって、経済問題は避けて通れない。これまで、沖縄は基地に依存した経済というのが定説だったが、すでに崩れている。例えば、米軍施設の返還後、再開発された那覇新都心「おもろまち」の経済効果は返還前の年間52億円から1634億円へ跳ね上がった。県は普天間返還後の経済効果を約4千億円と試算。極東最大の米空軍基地・嘉手納飛行場が返還された場合を、沖縄国際大学経済学部の友知政樹教授が試算したところ、実に年間1.5兆円にも上るというのだ。

「全基地撤去すれば総額3.8兆円になります。あえて北部のキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンなどは経済効果ゼロとし、厳しい設定をした。それでも雇用は10万人増、雇用者1人当たりの年収は平均84万円増えます」(友知氏)

 独立に向け、イニシアチブをとるとしたら、時の知事だろう。来年12月、翁長雄志知事の任期が満了となる。20年には県議選も控える。

「保守系9市長でつくる『チーム沖縄』が知事選で候補者を擁立する構えですが、依然、翁長人気は根強い」(地元財界人)

 現実味を帯び始めた「琉球国」。5年後には、歴史を変える第一歩を踏み出しているかもしれない。

※週刊朝日 2017年3月17日号










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