竹中労 2/20

 (お月様、もうしもうしお月様、でっかい餅を、大きな餅を下さいませ、赤ニシ拾うてさしあげましょう)
        ×
 子供らは天を仰いで月に祈った、だがその甲斐はなく、それからというもの二人して、昼も夜も海に出て貝を拾い、山に行って木の実を摘んで、生きていかねばならなかった。そしてまたある日、彼らは浜辺で人魚(じゅごん)が交合するのを見、真似てつるんだ。そのときから羞恥心を知った二人は、蒲葵(くば)の葉で前を匿すようになった。
 琉球の人々、みな彼らの子孫である。
        ×
 むかし琉球、汎アジア貿易の中継点として栄え、1個の海洋独立国家であった。国王、尚泰久(治世1954〜60)、巨鐘を鋳て首里城正殿に架け、銘していわく−−
 琉球国ハ南海ノ勝地ニシテ
 三韓ノ秀ヲアツメ
 大明ヲ以テ輔車トナシ
 日域ヲ以テ唇歯トナス
 此ノ二ノ中間ニアリテ
 湧出スルノ蓬来島ナリ
 舟輯ヲ以テ万国ノ津梁トナシ
 異産至宝十方刹ニ充満セリ
        ×
 まはへ、すづなりぎや
 まはへ、さらめけば
 たう、なばん
 かまへっで、みおやせ
 おゑちへ、すづなりぎや
 おゑちへ、さらめけば
            (おもろ・13の巻)
 [訳]
 真南風さらさらと吹きそめて
 鈴鳴りの船や
 唐、南蛮よりの物産を運びきたれ

-63-