太田竜 5/7

 彼は、「現代の眼」72年4月号の論文の中で、沖縄青年同盟を支援する運動に参加する決意について語っている。ところで彼は谷川雁という日本帝国主義とっておきのイデオローグが1960年にグァム島生き残り兵士について書いた文書を批判しつつ、次のようにどうということのない通俗な「文明的共産主義」のドグマを述べる。
 <辺境に共和国を幻視するという癖は、おおむね労働と生産に対する楽観に由来するし、トータルな日本の止揚を原基形態に求めるというこころみ、すべてこの肝心なところで失敗するように条件づけられている。
 ……日本国から離脱して自給自足で生存する共和国を、辺境に夢想するよりは、この国家を転覆させる作業に打ちこんだ方が、はるかに人間的だという自明の理を確認すること………>
 琉球共和国の志士は、石田郁夫というヤマトゥンチュ、琉球人民の味方のような顔をしながら、実はもっとも凶悪なヤマトの番犬であうことを、ただちに見抜いてしまうであろう。
 つまり、石田とその同類にとっては、琉球人民の「友」日本国の斗争は、石田に戦犯天皇糾弾の重要性を自覚させるための材料でしかないのである。更には、日本の革命を促進する契機にすぎないのである。
 要するに、石田郁夫にとっては、琉球人民は、日本に対して独立し、共和国をつくるという風な夢想をしてはならないのである。琉球人民は、あくまでも日本国の沖縄県民として日本の革命のためにつくさなければならぬのである。

     (九)
 わが「共和国」の人民であることを志願した者にとって、まずなすべきことは何か。
 全世界各地の「共和国」同胞の間に、「共和国」に固有のコミュニケーションのネットワークをつくり出すことである
 このコミュニーケーションの2つの主要な柱。それが
<芸術>と
<教育>
である。

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