野底土南 12/23

 この誤った「国家」観が人民をたやすく戦争に駆りたてさせ、「天皇陛下バンザイ」と自分の尊い命を落とさせるのだ。!
 この訳語は全く誤りであるばかりか危険である。
 正しく表現すれば、本来の意味の場合は権力集団、政府を含む場合は中央政府、またはたんに国といえばよい。総体概念としても同様、こんなところにもジャパンの学問がどんなに低級であるかよくわかるというもの。
 ところで、この本来の意味での国すなわち佐藤政権は、はたして、全国民の利益を守るだろうか。サトウ君は、しばしば国益という言葉を乱発するが国益とは一体誰の利益のことだろうか。
 権力または政権というものは、これを擁立したグループの利益を守るために生れたのだ。逆にいえば擁立グループは自分の利益を守るために巨費を投じて擁立したのであって、全国民の利益を守ることは当初から予定されていない。
 このように政権というものは成立の当初から差別するために生れるのである。
 わが琉球における屋良政権だって例外ではない。屋良政権を擁立したのは沖縄教職員組合を中核とする主として下級公務員グループであった。屋良政権は成立する当初からこれら公務員グループの利益を守るために生まれたのである。ありていにいえば復帰によって教員や他の下級公務員の賃金が、日本並に引きあげられるだろうと当初考えていたから、すなわち、彼らの経済的利益をはかるために屋良政権を誕生させたのだ。事実が示すとおり、「住民福祉優先」をエサに、公務員の賃金ひきあげに最優先の順位をおき、後述するとおり、政府財政を破綻させ、インフレをまきちらし、経済を破局におとし入れたことは誰の目にも明らかである。
イ 民族とは何か
 国家と同じく、民族も英語、フランス語、ドイツ語のネーション、ナシオン、ナチオンに由来する。民族という訳語は、血族、家族と並んで血の匂いが強い。
 しかし、今日、ネーションというとき、こういう血の問題ではなく、正しく被抑圧者たる人民が団結して、支配者から主権の地位を回復する運動に参加するとき、これら人民は民族と呼ばれる。訳語としては人民としてもよい。個々的に見れば、いろいろの人種もあるが、それは本質的なことではない。これが、現代における民族の本当の意味である。
 これを学問的には次のように表わす。
 「民族とは生物概念ではなくて、政治概念である」と。

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