1970年9月20日 琉球新報

琉球政府が尖閣列島海域を防衛 救難艇「おきなわ」を常置
来月中旬から出動 不法侵入取り締まる

 【東京】尖閣列島問題は、あわただしい動きをみせているが、琉球政府は十月なかばから同列島周辺海域の警備に力を入れることになった。これは、本土政府との協議で決まったもので、十月一日に本土政府から琉球政府に引き渡される救難艇「おきなわ」=三百五十トン=を尖閣列島海域に常時配置、台湾漁船の不法侵入を取り締まる。一方、本土政府は来年度に同列島最大の魚釣島に気象観測所を設置するため予算要求することになった。これは今後、台湾政府との間で進められる大陸ダナの領有権問題の交渉を有利に進めるための含みを持った措置ともみられる。

 救難艇「おきなわ」は、大分県臼木鉄工所で建造中のもので、十月一日に琉球政府に引き渡される。建造費は二億円で七〇年度の本土政府援助。艇の規模は三百五十トンで海上保安庁の使用している巡視艇と同型。同性能。十五ノットで、航続距離六百四十八キロの新鋭船。
 琉球警察が現在持っている救難艇は「ちとせ」百三十トンクラスが一隻あるだけ。「ちとせ」はスピードも遅くとくに航続距離が短いため行動範囲は限られていた。
 この救難艇を予算要求した六八年九月、領海警備の責任は米側にあることを主張、強く反対していた。当時、台湾漁船の尖閣列島や与那国島への不法侵入が相次いでいたこともあって総理府、琉球政府の強い要求で実現したイキサツもあった。
 当初から尖閣列島や与那国島海域の警備を目標にして建造したが、とくに最近、尖閣列島周辺の大陸ダナの領有権問題が台湾政府との間で表面化、また台湾の新聞記者が魚釣島に不法上陸して青天白日旗を揚げた事件まで起こっていることから、総理府と琉球政府が話し合った結果「おきなわ」は尖閣列島海域を常時警備することになった。
 「おきなわ」には、すでに陸上保安庁の保安官二人が艇長、機関長として乗り組むことになっている。復帰後は新設される第十一管区海上保安本部の巡視船となる。
 「おきなわ」は十月一日、臼木鉄工所で引き渡し式を終え、ただちに那覇に回航、十月中旬からは、尖閣列島海域に出動する予定。
 この警備行動とは別に総理府は来年中に魚釣島に気象観測所を設置するため、来年度の沖縄復帰対策費に約三千万円を要求することを決めた。
 魚釣島は黒潮の分岐点で 1.春先に本土へ大きな被害を与える“台湾坊主”の発生地帯になっている 2.タツ巻きの多発地帯であることから気象観測上も重要な位置にある。WMO(国際気象機構)も同島に「916」の気象地点番号をつけている。戦前は海軍気象部の観測所があった。
 計算によると、無人の気象観測所にし、風向、風速、気圧、温度などを調べ、そのデータを電波で琉球気象庁に送る仕組み。
 総理府は「尖閣列島問題とまったく関係ない」といっている。だが大陸ダナの利用については大陸ダナ条約第六条に「隣接する國の領域に同一の大陸ダナが隣接している場合は、両国間の合意によって境界線を決める」と規定され、両国の最先端から測って、そのまん中を境界線にすることが国際的な慣例。ところが「無人島の場合は領土の最先端とみなされない」という学説も一部にある。



琉球独立党のトップへ行く