琉球独立論研究資料

元のページhttps://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/375875/

基地NO 届かぬ民意 沖縄・衆院選後1ヵ月 進む辺野古、
体張る住民 「未来ない」国連訴え、独立論も

2017年11月26日 06時00分 西日本新聞


西日本新聞沖縄独立も  
基地NO 届かぬ民意 沖縄・衆院選後1ヵ月 進む辺野古、体張る住民 「未来ない」国連訴え、独立論も

2017年11月26日 06時00分 西日本新聞

 沖縄では、駐留する米軍機の事故や米兵による事件事故が後を絶たず、そのたびに米軍基地の過重負担への県民の怒りが噴き出す。ところが日米安全保障体制の恩恵を共に受ける本土側は「沖縄の問題」と突き放し、顧みないように映る。10月の衆院選でも、沖縄は「基地ノー」の民意を示したものの、政府は名護市辺野古で新基地建設に突き進む。沖縄の民意はどこへ向かうのか。衆院選から約1カ月。暖気が残る沖縄を歩いた。

 キュイーン、キューイン…。沖縄本島北部に位置する辺野古の米軍基地「キャンプ・シュワブ」ゲート前。11月に入っても、周辺の森からは電子音のようなセミの声が鳴り響く。

 エメラルドグリーンに輝く海岸沿いの同基地の奥で、普天間飛行場(宜野湾市)移設に伴う工事が続く。反対する市民数十人がゲート前に連日座り込み、資材搬入に抵抗している。

 搬入時間が迫ると県警機動隊員が現れ、座り込む市民を順々に抱え上げ、近くの歩道に移していった。「痛い」「触るな」。怒号が飛ぶが、それ以上の混乱はない。通路が広がり、数十台のダンプカーが基地に入っていった。1日3回の搬入のたび、同様の攻防が繰り返されているという。

 体を張って国策を阻止しようとする現場が、この国に今、ほかにあるだろうか。「目の前で進む軍事施設建設は見過ごせない」。市民の一人が語気を強めた。

   ■    ■

 民主主義の日本で、民意を選挙で示すのは当然だ。現在の沖縄県知事も名護市長も、辺野古移設反対を掲げて当選。衆院選では移設反対派候補が県内4選挙区のうち、辺野古に最も遠い4区を除き3勝した。それでも進む工事を、居ても立ってもおられず体を張るということか。

 ただ前回2014年の衆院選は反対派候補の全勝だった。民意に変化との指摘も…。

 琉球大に島袋純教授(行政学)を訪ねた。「選挙制度の欠陥ですよ」。実は前回、自民候補4人全員が比例九州で復活当選。九州も加えた民意で議員バッジが得られたのだ。今回の4区の当選者もその一人で、経済産業副大臣などの要職に就くことができ、今回選挙への効果が一定程度あったと、島袋教授は指摘した。

 沖縄の声を、国連に理解してもらおうと直接働き掛ける人もいる。

 国連人権理事会の作業部会が今年、約5年ぶりに日本の人権状況を審査するのに合わせ、スイスの国連欧州本部に出掛けた沖縄国際人権法研究会の真栄田若菜さん(34)に会った。各国外交官らに基地加重負担の現状を説明し「日米両政府は民意を完全に無視している」と訴えたという。

 作業部会が今月出した勧告には、「沖縄の人々をはじめ、少数派の人たちが社会権を享受できるよう対策を強化してほしい」との意見も盛り込まれた。

   ■    ■

 いらだちを募らせる沖縄では「独立論」も一部で真剣に議論されている。

 「今より安全で豊かな沖縄になるビジョンを科学的に立証したい」。13年に発足した琉球民族独立総合研究学会の理事、親川志奈子さん(36)はそう語った。

 会員数は発足当初の約300人から約100人増加。会報には経済分野での自立を試算した大学教授の論文もある。《全基地撤去後、跡地利用が進展すれば、日本政府の補助金がゼロでも、総所得は12年度の1・25倍と推計できる》

 県民にも懐疑的な見方が多い独立論は広がるのか。外国の独立運動に詳しい琉球大の江上能義名誉教授(比較政治学)は「スコットランドの独立論も多くの市民に相手にされない中で始まり、権限の大幅獲得に至った。沖縄世論も将来は燃え上がるかも」と警告した。

 酒場談議から広がるともされる独立運動。居酒屋で会った大学講師渡名喜(となき)守太さん(53)はオリオンビール片手にうなった。「このままでは沖縄に未来はない」。瞳に揺らぎはなかった。

=2017/11/26付 西日本新聞朝刊=
琉球独立運動資料館のトップページへ行く