日刊ゲンダイ 2010年2月23日
普天間は国外移設、叶わなければ東京へ  二極化・格差社会の真相

 はたして政府・与党は沖縄・普天間基地の県内移設で決着させる腹らしい。先週末には平野官房長官が仲井真知事に、「ベストを求めるがベターかも」と宣告。一方では米側にキャンプ・シュワブ陸上部への移設案を打診しているという。
 つくづく度し難い植民地根性だ。常に米国の利益を優先し、交渉の以前に国内を彼らの戦時体制に組み込むことだけに勤しんで恥じもしない。
 マスコミも同罪。その圧倒的多数派がこの間ずっと政権と足並みを揃え、「白いご主人様に逆らうと日米関係が大変だ」と世論誘導に励んできた経緯は周知の通り。
 宇沢弘文・東大名誉教授らが呼びかけ、作家の大江健三郎氏ら340人の知識人が賛同した声明も黙殺された。辺野古を含むあらゆる県内移設に反対し、冷戦構造を前提とする日米安全保障体制の見直しを求めて1月18日に参議院議員会館で行われた記者会見も、本土のマスコミは一行たりとも報じなかった。
 私自身も署名したひとりだ。普天間は沖縄県民だけでなく、日本に住むすべての人々が真剣に考えるべきテーマだとする趣旨に共感したのだが、もはや権力の宣伝機関に堕しきった大マスコミは、そのように考える人間など排除の対象としか見なしていないということか。
 移設先の候補には、北マリアナ連邦のフィティアル知事が歓迎の意向を示している。とりわけサイパン島に隣接し、米軍再編計画の一環で海兵隊の訓練地になる予定とされるテニアン島のデラクルス市長が積極的だと、これはNHKでも報じられた事実だ。
 にもかかわらず−−。そうした可能性さえもが、いつの間にかウヤムヤにされつつある。在日米軍の75%が集中させられている沖縄では、北部・東村の高江地区にヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)が建設されようとしていて、反対住民を政府が提訴するという異例事態にも至っているのだが、紙数が尽きた。
 もうこれ以上、沖縄を米軍の戦争の最前線基地であり続けさせていく権利など、誰にもない。私たちは普天間基地の閉鎖ないし国外移設に全力を尽くし、叶わなければ、東京が引き受けなければならない。
 米軍の核の傘にしろ彼らの戦争による特需を経済成長に結びつけた漁夫の利にしろ、最大の利益を享受したのは東京である。福祉でも教育でも、受益者負担が原則だとあれほど言い募ってきた日本国民ではないか。
(隔週月曜掲載)

斉藤貴男(さいとう・たかお)
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「機会不平等」「『非国民』のすすめ」「安心のファシズム」など著書多数。





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